SPECIAL INTERVIEW 2026

トップページ > SPECIAL INTERVIEW 2026

満島ひかり×cero「RECORD STORE DAY JAPAN 2026」ミューズ就任記念インタビュー

今年も4月に全世界で展開されるアナログレコードの大規模イベント「RECORD STORE DAY 2026」(以下、RSD)。2023年に次いで、この祭典のミューズを俳優、そして魅力的な音楽活動で知られる満島ひかりが務めることが発表された。彼女が今年のRSD開催を記念してリリースする最新音源「踊るノアール/dröm」では、作曲、サウンドプロデュースをceroが担当。満島ひかりにとっての音楽、レコード、そしてそれにまつわる“手間”について、ceroのメンバーである高城晶平、荒内佑、橋本翼とともに紐解く。

取材・文 / 高橋圭太 撮影 / 平間至
取材協力 / ELLA RECORDS VINTAGE

- 今回は「RECORD STORE DAY 2026」にまつわる鼎談ということで、満島さんとceroのみなさんにレコードにまつわるお話を伺おうと思っています。まずceroはこれまでもアナログレコードでのリリースを多くされていますが、サブスクリプションサービス全盛の昨今において、それでもレコードのリリースを続ける醍醐味はどんなところにあると思いますか。

高城: まず海外とかに行ったときに自分たちが作ったレコードを持っていってプレゼントすると圧倒的に喜ばれますね。そりゃあ“自分たちこういう音源出してます”って言ってスマホの画面を見せるよりよっぽどうれしいと思うし、逆にもし海外のアーティストに“こういうレコード作ったんです”っていただいたりしたらやっぱりうれしいですもん。そういったものって大事にするし、買うにしても体験も込みで記憶のアーカイブに入りやすいと思う。その力ってやっぱり侮れないなと年々思いますね。とはいえ自分たちはそこまでディガーではないんですよ。

橋本: 自分もぜんぜんディガーではないですねえ。

荒内: そうなんだよね。自分たちの世代のリアルはやっぱりCDってことになるんだけど、サブスクじゃない音楽のリリース方法っていまではCDよりもレコードのほうが自然な形なのかもなって最近は思いますね。

- 満島さんは3年前の「RECORD STORE DAY 2023」でもミューズを務められていて。当時のインタビューでは“お気に入りのレコード入れがあって、そこに収納できるぶんのレコードを大事に聴いていきたい”とお話しされていました。その後、所有レコードの増減はありましたか?

満島: 収納できるぶんってルールは崩してないです。いまはやっとオーディオセットを揃えはじめて、来週くらいには届くので楽しみなところ。わたしは、ちょっとめんどくさいこととか、情報が少ないほうが好きなので。たまたまの出会いとか会話でのおすすめはいいけど、自動でおすすめの曲が出てくるのが苦手で。

高城: ああ、たしかに苦手そうな感じ、しますねえ。

満島: おなじアルバムを何度も聴くタイプ。映画もおなじ映画を何度も観るタイプというか。おなじアルバムを何回も何回も聴いて、それが好きかどうかももうわからなくなるくらい。そういう意味ではレコードを聴くって行為はわたしにとっては大切な、なんとなく性に合ってるものなんだと思ってます。

- “レコードを聴く”という手間って、映画やテレビ番組を等倍速度で見ることですらタイパが悪いと言われる時代において、すごく贅沢な時間の使い方ですよね。便利な選択肢がたくさんあるなか、あえて手間や不便さを選ぶようなことってみなさんあったりしますか?

高城: あるんじゃないですかね。ぼくにとってはそれが読書だったりするのかなと思うけど。けっこう能動性が必要になるじゃないですか。手間っていうところの内実って結局はそういうことだと思います。受動的には入ってこなくて、自分で能動性を発揮していかないと掘り進めていけないものだから。レコードを再生するのにもそういうちょっとした能動性が入らないといけないわけで、その一連の作業が自分の記憶の楔に結びつきやすいってことじゃないかな。こんなこと言ったらタイパ重視のひとたちからしたら“はあ?”って感じなのかもしれないけど、そういうプレゼンしづらい利点みたいなのがあるはずと漠然と思ってて。

満島: すごくわかります。わたしはだいたいのことを不便にして泳がせてるというか、感触を確かめながら暮らしている感じがあるかもしれません。そうしてると、その余白の中から何となくの違和感とかわからないことが溢れてきて、ちょっとずつ繋がって、思ってもよらない奇跡が起きたりすることがあって。わたしは音楽が本業ではないけど、これまでレコードという、アナログなものを3枚制作してみて、“こんなことにつながるんだ!”とか“これ、昔から考えてたことだ!”みたいなことがたくさん起こっておもしろかったです。コーヒーを淹れるとか、日々の料理を作るとか、そういうのとおなじですかね。お肉屋さんで肉を買うとか、“トマトはここ”みたいなこだわりを持てる余裕って、かなり贅沢なことに感じるんです。

高城: クエストみたいなね。これまで満島さんと話してみて、そういうこだわりを自分のなかで楽しんでるひとだっていうのはすごく思いました。音楽の制作ももちろん、その先の流通だったりにまで精通してるじゃないですか。

満島: だれかの手に渡って、知らないひとのおうちで聴かれてるんだなっていうのを想像するまでが好きなんですよ。だれかの人生とすこしセッションする、ような。昨年リリースした「LOST CHILD (prod. MONDO GROSSO)」のときは、自ら作ったおうちの解体資金を探している知人がいたので、“そうだ、解体の様子をミュージックビデオで撮るのはどうかな”とアイデアを出してみて。

高城: ハハハハハ、すげえ! カッコいいなあ!

満島: 映像チームも本当に大事に撮影をしてくれて、みんなにとって素晴らしい撮影にもなって。いい曲やいい映画って作らなくてもすでに世の中にいっぱいある。そんななかで新しい作品を発表するって、わたしにとってはいま生きて出会えたひとと一緒に、破壊と再生、化学反応を楽しむってことなんじゃないかなって。今回のレコード制作で生まれた「踊るノアール」と「dröm」も、ceroの3人と出会ったからできるなにかであればと、音を楽しんで作れたなと思ってます。

Pagetop