AT THE RECORD SHOP

LiE RECORDS

2022/4/19

愛知県豊川市。日本三大稲荷として知られる豊川稲荷から歩いて15分ほどののどかな街並み。その風景に溶け込むLiE RECORDSは2020年8月にオープンした新しいレコード店だ。ロック、ヒップホップからニューエイジまで、幅広い品揃えは、レコード好きなら一日中宝探しが楽しめる充実ぶり。意外なアーティストが関わった開店までの経緯や、一人でも多くの人にレコードを楽しんでもらいたいというポリシーなど、店主の平松章也さんに話を伺った。(取材・文/ドリーミー刑事)


──愛知県内ではレコード屋さんを見かけることは少なくなっています。愛知県豊川市という土地で新しいお店を始めたきっかけをおしえていただけますか?

平松章也(以下、H):もともと地元は豊川なんですが、数年前は東京で音楽とは関係ない仕事をしている普通の音楽好きでした。そこに幼なじみが勤めている会社の社長さんから「空いているスペースでレコード屋を始める人を探している」と声をかけられたのがきっかけです。突然の話だったし、レコード店を経営するノウハウもなかったんですけど。でも東京の職場で、GEZANのベーシストだったカルロス君が同僚で仲が良かったんです。そこで彼のツテをたどって、広島市にあるSTEREO RECORDSさんを紹介してもらって、「レコード屋さんってどうやるんですか?」とファミレスで2時間くらい教えてもらいました。そこで教わった通りに急いで準備して、お店をやるって決めてから半年後にはオープンしました。もう完全に見切り発車でしたね(笑)。LiE RECORDSという名前も、カルロス君と二人でうんうん唸った末に、最後に彼が閃いたものです。


──お店のロゴをコーネリアスなどのアートワークで知られる北山雅和さんが手がけていますね。

H:レコード店を経営するなんて考えていなかった時期に、東京で北山さんの個展を観てかっこいいなと思っていて。GEZANのロゴもデザインしていたので、ダメ元でカルロスさん経由でお願いしてみたら、なんと引き受けていただけました。びっくりしたし、本当にうれしかったですね。文字を使ったデザインなら北山さんしかいないと思っていたので。


──突然舞い込んできた話をきっかけに開店されたということでしたが、こういうお店にしようというイメージはあったんですか?

H:やっぱり地方にあるレコード店なので、本当の意味で誰にでも開かれたお店にしたいとは思っていました。どんな音楽の趣味の方が来ても一枚は買って帰るものがあるように、ジャンルもある程度は幅広くそろえたいな。また、永く地元に根づいていくためには、一人でも多くの人にレコードの楽しさやレコード文化に興味を持ってもらいたいと思っていて、今は定期的に近くの銭湯の番台でDJをやったりしています。


──入門用のレコード・プレーヤーを販売しているのも新しいレコード・ファンを増やしていきたいという思いからでしょうか。

H:そうですね。できるだけ敷居は下げていきたいと思っています。若いお客さんが友達と一緒にお店に来て、その友達が買ってくれたりしますよ。そうやってレコードに興味を持ってくれた人が最終的にTechnicsのターンテーブルを手に入れるところまでいってほしいですね(笑)。僕もSL-1200を10年以上使っていますけど全然壊れないし、信頼感が他のターンテーブルとは違いますね。DJする時もどんなお店も絶対これが置いてあるという安心感もありますしね。


──今はレコードの実物を見たことが無いという若い人も多いでしょうから、入門者に優しいお店は本当に大切ですよね。店内のレコードは中古だけではなくて、ローズ・レコーズや十三月、BLACK SMOKER RECORDSなどの新譜も入荷されていますね。

H:自分が好きな音楽だったり、この街の人に聴いてほしいと思った作品を入荷しています。ちなみに僕が一番最初に買ったレコードは曽我部恵一BANDの「TOKYO CALLING」でした。ライブ会場で手に入れました。そこから曽我部さんが雑誌や本で紹介するいろいろなジャンルの音楽を追いかけていったりレコード屋さんで内容の分からないソニック・ユースの12インチを、恐る恐る買ってみたり……という感じで幅を広げていきましたね。


──これからLiE RECORSとして力を入れていきたいことはありますか?

H:やっぱり広くレコードに親しんでもらえるようなことをやっていきたいです。例えば高齢者の介護施設にレコード・プレーヤーと古いレコードがあれば、リアルタイムで聴いていた世代の方も楽しんでもらえたり交流のきっかけになったりするだろうし。中学校や高校の文化祭とかでDJプレイを楽しんでもらう機会とか作りたいです。


──RECORD STORE DAYというイベントもレコード文化に触れるきっかけになると思いますが、期待していることなどはありますか?

H:やっぱり15年間もこういう企画を続けてきてくれたおかげで、今の盛り上がりがあると思うんですよね。地方のハードオフで若い人がレコードを買っているなんて、以前なら考えられなかったじゃないですか。ウチの店はまだ去年はいくつか仕入れてみたというレベルですし、今年もそうたくさん並べられないかもしれないけど、いつかバーンと壁一面に陳列できるくらいのお店になれたらいいですね。今年のタイトルの中では松平健の「マツケンサンバⅡ」が楽しみです。なんといってもお隣の豊橋市の出身なので(笑)。銭湯でDJする時にガンガンかけていきたいです。あとKANやMIHIMARU GTもリリースされますけど、こういう日本のポップ・ミュージックの掘り起こしはいいですよね。こういう流れでジャニーズ系のタイトルが7インチで出たらめちゃくちゃ盛り上がると思います。90年代のSMAPとかがリリースされたら最高ですよね。

取材・文:ドリーミー刑事  カメラマン:荒川晃充

【Lie RECORDS】
■住所 愛知県豊川市駅前通4丁目18(名鉄「稲荷口駅」から徒歩7分・駐車場あり)
■電話番号 050-1308-6934
■営業時間 12:00~20:00(定休日 木・金曜日)
■取扱ジャンル オールジャンル、レコード(新譜1割・中古9割)、CD、カセットテープ、レコードプレーヤー、
DJカートリッジ、DVD、書籍、その他関連アイテムも取り扱う
■在庫数 25,000枚

愛知県豊川市にて2020年8月オープンした、ジャンルレスでタイムレスに世界中の音楽を取り扱うレコード店。
昭和歌謡~アンダーグラウンドなのでクラブ・ミュージックまで充実した、老若男女が誰でも楽しめるショップ。
国内外のコアなレーベルのセレクト、レコードプレーヤー、DJカートリッジ、その他書籍などの取り扱いにも注目!

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