AT THE RECORD SHOP

RAF-REC

2022/4/19

山形駅の西口近くにあるレコード・ショップ、RAF-RECの髙取信哉さんは、正直な店主だ。レコードについても、RECORD STORE DAY(以下、RSD)についても、思いをありのままに話してくれる。店主の人柄に触れること。それが個人店に行くことの楽しみの一つだと改めて実感する取材だった。エフエム山形のラジオ番組「西口のレコ屋から」のパーソナリティも務める高取さんに、店頭から見えている事について話してもらった。(取材・文/加藤孔紀)


──はじめに、山形で開店するまでの経緯など、お店についておしえていただけますか。

髙取信哉(以下、T):大学生時代に地元山形のレコード屋でバイトをして、卒業後もそこに就職しました。宮城県のお店に異動になったりしながら18年ほど働いて、いつかは地元で自分のお店をやりたいと考えていたので、RAF-RECを2013年に開店しました。今年で9年目です。メインは中古レコードの販売で、店内の半分はカフェ。夜はバー営業でお酒も出していて飲食もできます。


──例年、RSDに参加していて変化を感じることはありますか。

T:初参加した約7年前は、国内でRSDが大々的に始まったばかりでした。その時は、良いきっかけだと感じてたくさんオーダーしたし、終日DJを入れて盛り上げたんです。ただ、正直なところ最近は、RSDの限定タイトルで売り上げがとれないので、商品を厳選しています。けれど、そうするとお客さんは目当てのタイトルがないときに、大型店にも行かないといけなくて二度手間になってしまう。そういう状況もあって、期間中にセールを実施して、お得に買ってもらう機会にもなるようにシフトしています。飲食含め、うちなりの関わり方で盛り上げるようにしていますね。


──髙取さんもDJをされてるんですよね。RSDにも関わるTechnicsの機材を使うことはありますか?

T:初めて人前でDJしたのが25年前。当時はイギリスのロックが流行っていて学生時代はロックを、スクラッチを覚えてからはヒップホップや、テクノなども聴いて選曲するようになりました。初めて買ったターンテーブルはSL-1200mk2でしたね。お店のターンテーブルはmk3dで、試聴用がmk2、自宅はmk5です。Technicsは慣れているから安心で使いやすい。壊れては買い直してます。


──そんなご自身の音楽の好みと、店頭のラインナップは関係しているんでしょうか。

T:うちは査定買取のみで在庫を持っているので、セレクト・ショップではないんです。けど、なぜかロックとかテクノのレコードが集まってくることが多い。近くにbiscuit recordsというブラック・ミュージックに強いお店があるんですけど、自然と街の人がお店ごとの特色を感じて持ち込みに来てくれているんだと思います。一方で、RSDもそうですが、付き合いのあるレーベルやアーティストの音楽は新品で仕入れるようにしていて、そこは自分のセレクトですね。山形駅前は歩ける距離にレコード屋が集まっているし、お店同士のバランスも良いと感じています。


──今年のRSDは、テイラー・スウィフトがアンバサダーになったりと、近年、レコードを聴くリスナーが若返っているような雰囲気も感じます。客層の変化などを体感することはありますか。

T:若い人で新たに常連になってくれる人は、年に数人と少ないです。ただ、その中でも女の子のお客さんが増えていると感じますね。彼女たちと話していると、山形からも近いアラバキ・ロック・フェスティバルなどの機会を通して、日本のインディ・バンドが身近になっていることが影響しているんだと気付きました。山形は銀杏BOYZの峯田和伸さんの出身地ということもあって、彼らのリリースの日にはお店に並ぶ方もいるんです。


──最後に、高取さんにとってレコードはどういうものでしょうか?

T:若い頃からお世話になっている仙台のレコード屋、STORE15NOVのオーナーの青山(泰知)さんが「黒い回転ゴミ日記」というタイトルでブログを書いていて。お店をやっていて思うんですけど、レコードって、もちろんそれ以外も、どんな個人的な趣味の物もその人以外には、ゴミに見えたりするんですよね。青山さんも誰かが言っていた言葉を聞いて、ブログのタイトルにしたみたいなんですけど「黒い回転ゴミ」は、言い得て妙だなと思うんです。誰から言われたわけでもなく必死に集めて、自分は商売にまでしている。ただ、正直、これ俺が死んだらゴミだなって。僕にとってレコードは商売にしていたとしても、最後まで個人的な趣味の範疇から出ないもので、それに対してどれくらい熱意をかけられるかだけなんです。周りからも、うちの店は僕の部屋みたいだと言われるんですよね。お酒も飲めるし。レコードを通して何かを伝えようとかもあんまりなくて。「レコードって音が良いんですよね?」と聞かれても、ノイズが入るし音は良くないよって答えちゃいます。ただ、僕個人はそれも含めて好きだって、素直に言ってます。僕が何十年もかけて夢中になってきたものがレコードで、それくらい魅力があるものだということに気付いてもらえたらいいなと。人生をかけてって言うと大袈裟ですけど、僕個人にとってはそれくらい大きなもの。それは死ぬまで変わらない。他の人にとっては意味がなかったとしても、僕にとってはめちゃくちゃ意味のある対象、それがレコードです。

取材・文:加藤孔紀  カメラマン:Kaho Fuse(Strobelight)

【used cd/record &cafe RAF-REC】
■住所 山形県山形市双葉町2-1-1 結城ビル1階(山形駅 徒歩6分)
■電話番号 023-645-5565
■営業時間 平日11:30~21:00/週末11:30~24:00(定休日 月・火曜日)
■取扱ジャンル オールジャンル/レコード(新譜1割・中古9割)
■在庫数 CD約2000枚、レコード約2000枚

和モノからクラシックまでオールジャンル。ピアノ、ドラム、PA機器を置いたカフェスペースが併設。
週末にはDJバー営業、DJイヴェント、ライブイヴェントも行っています。

Pagetop