10年くらい前から新譜、それも新しいアーティストのアルバムを買うことが多くなっています。もちろん、相変わらず中古盤にまみれてはいますが、面白い新譜が続々と発売されるので追いかけるのが大変!ここ数年は自分のラジオ番組でも毎回1枚買ったばかりの新譜を紹介しているので、新しいアーティストのレコードを探すのが日課のようになっています。だけど、僕が今住んでいる福岡の街には新譜のアナログレコードを取り扱っている店が少ない。中古盤のお店はそこそこ充実しているのだけど、新譜、それもちょっと個性的なものになると店頭で探すのは難しく、結局そのレーベルから高い送料を払って直接買ったり、他の地域のレコード店から通販したり。もちろん、それはそれで楽しいのだけど、レコードはやはりお店でジャケットを直接みて買うのが一番。特に僕は基本的にジャケ買いが好きなので、ネットよりは店頭の方がいいんだよね。お店で買う楽しみとすれば、お目当てのレコード以外にもたまたまお店でかかっていたレコードも買ってしまったりとか、店主のオススメを教えてもらったりとか・・・。そんな新しいレコードを発見したい欲を満たしてくれるのは、今の福岡ではなんと言っても『BAGISM』ではないでしょうか。
福岡の中心部から少し歩いた春吉に2020年にオープンした『BAGISM』は福岡でも珍しい新譜を中心としたレコード店。扱っているレコードも、福岡の他のレコード店では扱わないようなインディレーベルのものを中心に独自のセレクトがとても新鮮! 実は『BAGISM』を開いたのは、福岡のパンクバンドThe PRACTICEのベーシストのCarterさん。The PRACTICEのライブやイベントなどで顔見知りだったCarterさんが、突然レコード店を開いたのでビックリ。普通、レコード店を始める人はそれまで別のお店で働いている場合が多いのだけど、Carterさんは全く未経験の中で突然レコード店をオープン。福岡で面白い新譜を扱っている店がなかったから、自分で作ってしまえと思ったのがきっかけだったらしいんだけど勇気あるというかパンク魂というか。仕入れに関しても、全くツテのないところから、ネットで調べた海外のレーベルに福岡の現状や、この街にそのレーベルのレコードを置きたいんだという気持ちを綴った熱いメールを書いて直談判。その気持ちに応えてくれた海外のレーベルが増えて取引ができるようになったんだって。お店で扱っているレコードは、どれもCarterさんがしっかり聞いて気に入ったもの、もっとみんなに聞いてほしいと思ったものだけを仕入れているそうなので、その辺りも信頼できる訳です。
さて『BAGISM』の店内の紹介をもう少し。階段を上がってお店に入ると二部屋に分かれた店内。手前の部屋にはDJブース、奥の部屋には冷蔵庫とソファ、テーブル、レジカウンター。という配置。冷蔵庫にはクラフトビールが冷やしてあって、店内で飲みながらレコードの話ができるなんて最高なんですけど。他にもカセットテープやセレクトされたZINE、少しだけ中古盤。ついつい長居してしまう居心地の良い店内はCarterさんの人柄も大きいでしょう。そして、両方の部屋にレコード棚があるんだけど、一番の特徴はジャンル分けしてないということ。仕分けされてないって、レコード屋さんに行き慣れている人ほど面食らうかもしれないですよね。片岡さんに話を聞くと、あえてジャンル分けしてないのは、今の新しいアーティストはジャンルにとらわれない表現をしているアーティストも多いし、お客さんにもジャンルという枠にとらわれないでレコードと出会って欲しいという気持ちもあるからだとか。その辺りは店名の『BAGISM』とも関係がある感じだなぁと。店名の『BAGISM』という言葉は、ジョン・レノンとヨーコ・オノが1960年代末に作った造語で、大まかに言うとBAG(袋)の中に入ってしまうと外的情報がわからなくなって、見た目などからくる固定概念に囚われなくなるという考え方(詳しくは各自調べてください)。レコード店『BAGISM』が目指す形もなんとなく感じられる気がしますよね。
毎月、親不孝通りのDARK ROOMで開催されている、最新の洋楽のインディーロック中心のDJイベント『NOBODY』を筆頭に、福岡にも興味深いイベントやオーディエンスが増えてきている気がするんだけど、知り合いの若いDJも福岡に『BAGISM』ができて本当に嬉しいって話してました。そんなわけで、確実にシーンを形成しつつある『BAGISM』ですが、今後はレコード店だけではなくレーベルも始めるそうなのです。第一弾はKiliKiliVillaとのダブルネームで The PRACTICEの7インチをリリース予定。今後も福岡のアーティストを中心にリリースを考えているそう。店内でDJイベントをしたり、角打ち的に飲んだりすることもできるので、ここで知り合った人達で何か始めたりとか、レコード店という枠を超えて『BAGISM』をきっかけに新たな動きがでてくると面白いですよね。
文:常盤 響 カメラマン:HBK!
【Record Shop BAGISM】
■住所 福岡県福岡市中央区春吉1-7-17 第一大橋ビル2F(渡辺通駅から徒歩1分・駐車場なし)
■営業時間 13:00~22:00(定休日 火曜日)
■取扱ジャンル オールジャンルの新譜を中心に取り扱っております
■在庫数 在庫数600枚
福岡は天神ド真ん中からちょい外れに位置するホットスポット春吉にて店を構える。
世界中のインディペンデントミュージックや、今ようやく日の目を浴びることになったレアグルーヴのリーシュー、
とにかく「今聴く」ということが当たり前にフレッシュであったり、ディガーにとっての泥沼を存分に意識した
あわよくば音楽の歴史や発展を伺えてニヤリとできるなどそんなレコード、カセットテープの新譜を厳選して取り揃えております。