AT THE RECORD SHOP

RECORD STATION

2022/4/19

渋谷、新宿と並んで、日本のレコード文化を形成してきた下北沢。駅前の再開発によって街が新しく様変わりし始めたタイミングと合わせるように横浜から移転してきたのがRECORD STATIONだ。お店を開いてから13年、レコードを取り巻く環境の移り変わりに応じて、お店も店主である伊藤翼さんもスタイルを変えてきた。RECORD STATIONは下北沢でどんなお店を目指そうとしているのか。伊藤さんに話を聞いた。(取材・文/油納将志)


──下北沢といえば、90年代から渋谷と並んでレコード店が多い街として知られていますが、そんな激戦区にお店をオープンさせたのが2017年。今年で5周年を迎えられますね。

伊藤翼(以下、I):下北沢の前は横浜で営業していて、レコード店としては13年続けてきています。横浜から下北沢に店舗を移転したのは完全に時代の流れですね。インバウンドが盛んになったり、女性を含めた若い方たちがレコードを購買する機会が増えたりしてきましたので、オンライン販売だけでなく、実店舗に力を注ぎたいと考えていたタイミングでもあり、外国の方からのアクセスも考えて下北沢にお店を構えました。下北沢は古着屋も多くて、古着を探しに来たついでにレコードも見に来てくれたり、その逆もあったりで。この下北沢の一番街にはうちも含めてレコード店が3店舗ありますが、競合というよりは3店舗あるからこそ、お客さんが足を向けてくれると考えています。そんな状況の中でどういう風にお店をやっていこうかというヴィジョンも最初から描けていました。


──そのヴィジョンとは?

I:横浜から下北沢に移転するに際して、同じスタンスでやっていこうとは思いませんでした。横浜で店舗を始めた時はオンラインビジネスが盛んになり始めていた頃で、そのECサイトを活性化させていくことで売上を立てていったので、店舗兼倉庫というような営業スタイルでしたね。その時は海外買い付けで仕入れをしていましたので、自分が海外でセレクトした商品をお客さんに見てもらって導くような感じで買っていただいていました。しかし、Instagramが広まってきて、お客さんに商品を見せる頻度がどんどん詰まっていき、海外で買い付けをしてきてドンと一気に見せるというスタイルから、絶えず新しいレコードを見せていくスタイルへと変わっていった。お店に来てもらったらわかるよという時代から、発信した情報から興味を持ってもらい来店してもらうという時代になったと思うんです。ですので、SNSを使って、自分のお店はこうだよというアピールを日本だけじゃなくて、海外にもしていくことをヴィジョンとして思い描いて下北沢のお店をスタートさせたんです。東京オリンピックもちょうど決まった時だったので、世界のレコード好きから日本に注目がより集まっていた時で、もうここしかないっていうタイミングでしたね。


──しかし、新型コロナウィルスによって東京オリンピックは延期開催、海外からの観戦客もやって来ることはありませんでした。

I:新型コロナによってインバウンドのお客さんが完全にストップしたことによって、すごく悩んだ時期がありました。Instagramもインバウンド向けに英語で発信したりしていたんですが、コロナになってからは日本のお客さんを見つめ直すきっかけにもなりましたね。横浜時代ではやっていなかった新譜をリリース前からしっかりアピールしてECサイトを見てもらう機会を増やしながら、若い層の方たちに来店してもらうという方向性を打ち出していきました。そうすると、インバウンド頼みじゃなくてもやっていけるという実感が生まれていったんです。今も実店舗とウェブをもっとうまくつなげられるんじゃないかと試行錯誤しているところです。


──若いお客さんは新譜を求める傾向があると。

I:新譜を求められる方も多いですが、自分の好きなミュージシャン、ジャンルをレコードで触れたいという気持ちが強いように感じます。ですので、安価で色々と揃えて聴きたいという方に100円、300円、500円のコーナーを設けたりもしています。古着屋で自分の感度に合った一点物を探すように中古レコードも見るような、お店に来て新しい発見もしていただけたらうれしいですね。昔は壁レコ=壁に面出しされているレコードは高価なレア盤がずらっと並んでいるのが当たり前でしたが、今はレコードを買い始めた方も目に留まるようなリーズナブルな盤も織り交ぜてディスプレイしています。高い商品が並んでいることだけが良いお店の条件という時代ではないですし、今の若い方たちは高いレア盤を所有して喜ぶよりも、純粋にレコードで聴く楽しみの方を求めている。これも下北沢に移転してから感じたことで、そういうお客さんのニーズを念頭に置きながら、来店したら何か1枚でも買いたくなるものがあるようなお店作りを目指しています。


──DJや、DJを志望する人を対象とした、ジャンルに特化したレコード店が90年代から増えていきましたが、RECORD STATIONは様々な層を対象としたジャンルを限定しない間口の広いお店だということが在庫を見ていても伝わってきますね。

I:横浜時代のお店はまさにDJユースな盤をメインに扱っていましたが、お客さんが変化していったことで、お店も変わっていき、今のスタイルに行き着きました。自分がビギナーだった頃に通った、想像をふくらませながらレコードを探す楽しみを感じたり、店主と話しながらレコメンドしてもらったお店に近づいていっていると思いますし、これからも老若男女、国籍問わず、ここに来れば買いたいレコードが見つかるというようなお店を目指していきたいですね。

取材・文:油納将志  カメラマン:嶋田 祐

【RECORD STATION】
■住所 東京都世田谷区北沢3-30-1 かどやビル2F(下北沢東口から徒歩4分)
■電話番号 03-5738-7810
■営業時間 13:00~20:00(定休日 火曜日)
■取扱ジャンル 和モノ/SOUL/FUNK/JAZZ/ROCK/HOUSE/DISCO/HIP
■在庫数 中古レコードの他、新譜も合わせて4000枚の在庫が店内に陳列されています。

下北沢の一番街商店街のレコード屋です。国内外からの買い付けや、買い取りによる豊富な商品数に加え、音楽に関係するアパレル品、オリジナル・グッズも展開。
HOP/REGGAE/SOUNDTRAK/J-POPなど基本的にオールジャンルのレコードを取り扱っています。

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