このページでは、創業100年を超えるレコード針(カートリッジ)メーカー、オルトフォンがレコード再生についてのノウハウをご説明します。

レコード再生を行う際に必要となる、カートリッジ・レコードプレーヤー・レコード用アクセサリー。レコードを聴くにあたって、これらを初めてご使用になる方や日頃なんとなく使っている方もいらっしゃることと思います。しかし、このページを読むことで皆様に機器の正しい使用方法をご理解いただき、レコード再生という文化をよりエンジョイしていただけることを願ってやみません。

Ⅰ.レコード針(カートリッジ)について

ⅰ.レコード針とは

レコード針は、レコード盤に刻まれた音楽を拾い上げ、音声や電気信号に変換するための機器で、それ自体を指して「カートリッジ」とも呼びます。レコード盤の音溝をなぞる(トレースする)針先の部分には様々な素材が用いられますが、現代ではダイヤモンドやサファイアなどの宝石素材が主流です。カートリッジには発電方式によっていくつかの種類があり、「MC型」と「MM型」の2種類に大別されます。

①MC型カートリッジ Moving Coilを略してMCと称します。上図の通り、先端に宝石の針(スタイラスチップ)が取り付けられたカンチレバー(針がピックアップした振動をカートリッジに伝える棒状のパーツ)の根元部分には、細い電線を巻いたコイルが取り付けられています。このコイル部分が動くことで発電が行われ、レコード盤の音溝に刻まれた音楽を電気信号に変換します。MC型は精緻でワイドレンジな音楽再生を得意としますが、針先部分の交換はできません。

②MM型カートリッジ Moving Magnetを略してMMと称します。MC型とは逆に、カンチレバーの根元側に取り付けられたマグネットが動くことで電気信号を発生させる方式です。構造上、コイルの巻線数を増やすことが容易で出力を大きく取る(大きな音を出す)ことができ、アンプのPHONO入力があれば使用可能です。また、コイル部分とマグネットより先の部分を切り離すことができるため、下図のようにご自身で針先部分を交換することができます。

ⅱ.カートリッジの針先について

カートリッジのカンチレバー先端には、スタイラスチップと呼ばれる宝石素材でできた針が取り付けられています。この部分こそ、レコード盤の音溝(グルーヴ)に直接触れて音楽をピックアップする極めて重要なパーツです。多くはサファイアやダイヤモンドなど、熱や摩耗に強い硬質な宝石素材が用いられていますが、摩耗のスピードや耐久性を考えると、ダイヤモンドのスタイラスがベストです。サファイアのスタイラスはダイヤモンドに比べ摩耗しやすいため、カートリッジ、もしくはその針先を頻繁に交換する必要があります。

摩耗した状態のスタイラスチップで音楽を聴き続けると、音のビリ付きや途切れ、針飛びなどの原因にもなり、レコード盤の音溝や盤面に傷を付けて痛めてしまう場合もあります。 ご愛聴盤のコンディションを最良に保つためにも、よく聴いている盤で音が変だな?と感じた場合はカートリッジやその針先を交換しましょう。

また多くの場合、レコードを再生するとカートリッジの針先にゴミやホコリが付着します。これらのゴミもまた、そのままにしておくと針先に固着したり盤を傷めたりする原因にもなります。下の動画を参考に、こまめなクリーニングを行うようにしましょう。なお、オルトフォンでは針先のクリーニングに乾式のブラシを推奨しております。

Ⅱ.レコードプレーヤーについて

ⅰ.レコードプレーヤーとは

レコードプレーヤーはレコード盤を再生するために使用する機器で、盤を乗せる部分が回転するためターンテーブルとも呼ばれます。回転機構と音声ピックアップ用のトーンアーム、これらを取り付けたキャビネットから構成されていることが多く、中にはアンプやスピーカーを内蔵しているものもあります。回転機構の部分では回転数の変更を行うことができ、多くは1分間に33 1/3および45回転するようにつくられており、一部プレーヤーでは78回転にも対応しています。

ⅱ.レコードプレーヤーのセッティング方法

レコードプレーヤーには様々な種類がありますが、どのような製品であっても押さえておくべき基本的な要素が2つあります。

それは「水平」と「振動」です。

最初に、水平について。 音響機器は床と水平になる頑丈な棚などに設置することが望ましいですが、レコードプレーヤーは特に水平であることが求められます。その理由は、ターンテーブル(プレーヤーの回転する部分)をブレなく滑らかに回転させるためには、ここが地面と水平であることが大事なのです。これは全てのプレーヤーに共通する鉄則で、多くの製品はキャビネットの脚に高さの調節機構を備えています。これを用いることで、プレーヤーの水平を調整することが可能です。高さ調節の機構がない場合は、紙片などを挟んで微調節してみましょう。また、水平調整の際にはバブル式の水準器を用いると、容易に傾き具合を検査することができます。プレーヤーが水平となることで回転ムラの発生を防ぐことができ、回転軸にも偏りなく適切な負荷がかかります。結果的にプレーヤーの寿命を延ばすことにもなりますので、セッティング時に水平調整は必ず行いましょう。

次に、振動について。 レコードプレーヤーは、設置場所で起こる振動をそのまま音として拾ってしまいます。このため、プレーヤーの設置場所はお部屋の中で最も安定した、頑丈な木の棚などの上が望ましいです。クッションや段ボール箱などの柔らかいものの上や、ガラスや薄手・網状のスチールラックなどの上に設置するのは極力避けましょう。 またレコードプレーヤーが振動を拾うことで、再生中に針飛びを起こしたりスピーカーからノイズが出たりすることがあります。中でもボリュームを上げるにつれて「ボー」や「ワー」というノイズが大きくなる場合は、「ハウリング」と呼ばれる現象が発生している可能性が高いです。対処方法としては頑丈な棚の上にプレーヤーを移動させることが最も望ましいですが、どうしても難しい場合はプレーヤーの下にそれと同サイズ程度の木や樹脂などのボードを敷くか、キャビネットの脚の下にゴムシートを挟むと改善されることがあります。

下の動画もご参照の上、お部屋にプレーヤーをセットする際は「水平」と「振動」に留意するようにしましょう。

また、レコード再生を行っていると稀に音が出なくなることがあります。その際の原因として最も多いのが、カートリッジとトーンアームの端子間での一時的な接触不良です。この場合は、下の動画にある方法でクリーニングを行うことで解決します。

Ⅲ.レコード用アクセサリーについて

ⅰ.レコード用アクセサリーとは

レコード再生を行う際に重要なのは、レコード盤面のクリーニングです。レコードにとって盤面のホコリや汚れ、傷は天敵です。音楽再生後の盤面やカートリッジの針先は、ブラシなどのアクセサリーを用いて小まめにクリーニングし、ホコリや汚れを取り除くようにしましょう。

また、他のアクセサリーにはレコード針をトーンアームに取り付けるためのヘッドシェルや、カートリッジとヘッドシェルの間をつなぐリードワイヤー、カートリッジを安全に収納するためのカートリッジケースなどがあります。ヘッドシェルとリードワイヤーは下図に示された場所に使用するもので、これを交換することで音色をカスタマイズすることもできます。

Technics SL-1200シリーズに搭載されているようなユニバーサル型トーンアームの場合は、ヘッドシェルの脱着によって簡単にカートリッジを交換することができます。カートリッジをヘッドシェルに取り付ける方法は、下の動画をご参照ください。

カートリッジとヘッドシェルを結線するリードワイヤーは、最も手軽に音色のカスタマイズが可能なパーツのひとつです。下の動画を参考に、リードワイヤーの交換にもチャレンジしてみましょう。

また、カートリッジの保管や持ち運びの際には、専用のカートリッジケースを用いるとより安全です。

オルトフォンジャパン公式サイト: https://www.ortofon.jp

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