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RSD2024レコードショップ座談会

2024/4/19

Record Store Dayの開催に併せ、すっかり恒例となったレコードショップ座談会を今年もお届け。

今回はインディーレーベルとの両軸で運営されているレコードショップにフォーカス。HALFBYやHomecomingsといったアーティストを擁し、京都・西陣に実店舗を構えるSecond Royal Recordsの小山内信介さん、兵庫県・加古川を拠点とし、ドリームポップやシューゲイザーを中心に近年ではアジア圏のアーティストを精力的にリリースするfastcut Recordsの森川直樹さん、多種多様なジャンルを独自の嗅覚でセレクトし、知られざる音源を発掘し世に届けるdessinee shopの丸山雅生さんの御三方にお集まり頂いた。

いずれも関西でレーベル/店舗の運営をスタートし、それぞれ「インディーロック」という出発点を持ちながら独自のキャリアを築き上げてきた三者。

音楽を売ることと、新たな音楽を世に送り出すことを同時に生業としながら、レコードという媒体に携わり続ける彼らの言葉に耳を傾ければ、再び多くの人々を惹き付け続けるレコードの魅力が分かるはずだ。

参加者
Second Royal Records 小山内信介さん
fastcut Records 森川直樹さん
dessinee shop 丸山雅生さん

取材・文:山本輝洋(東洋化成ディストリビューション)

──皆様はそれぞれ古くからのお知り合いということですが、どんな出会いだったんでしょうか?

森川 結構昔からになりますよね。ずっと知り合いです。

丸山 もう、そういう「知り合い」とかってレベルじゃなくて(笑)。森川くんとはいつからやったっけ?

森川 多分2005年じゃないですか?僕は当時神戸にあったJETSETで働いていたんですけど、ちょうど丸山さんがdessineeを三宮〜元町に2002年にオープンして、休憩時間に行ったりしていたんですよ。

丸川 神戸のJETSETのすぐ近くにうちの店があったから。でも、森川くんって店始める前から知り合いじゃない?

森川 そうですね、もう覚えてないぐらい前なんですけど......。その後神戸から京都のJETSETに移ったんですけど、その時期に小山内くんがZESTで働いていて。

小山内 はいはいはい。あのZESTですね。

森川 その頃小山内くんは京都METROでSECOND ROYALの母体となるイベントをやっていたんですけど、僕はそのイベントにお客として行ったりしていました。

丸山 小山内くんとはどうやって会ったのか覚えてないですね。いつやったっけ?

小山内 僕も覚えてないですね。だいぶ前だと思うけど、森川くんと会ったのと同時期じゃないかな?「神戸に店を出す」って話を聞いて、「SECOND ROYALの商品を置いてもらえないかな」みたいな相談をしたりとか。

丸山 多分、HALFBYの一番最初の12インチの時かな。

小山内 じゃあ、2001年ですね。

丸山 そんな感じです。

──20年以上のお付き合いになるんですね。皆様がレーベルやレコード屋さんを始めるに至った経緯を簡単に教えて頂けますか?

小山内 僕はレーベルのスタートが先で、2001年にHALFBYの12インチをリリースさせて貰ったのをきっかけにインディーレーベルを始めました。当時TSUTAYA西院店や京都のART ROCK No.1って中古レコード屋さんや、渋谷と京都に2店舗展開していたZESTの京都店で働いていたりとか、レーベルをやりながら働いていたのがレコード屋さんだったんです。そのままレーベルを続けている中で、2012年に店舗兼事務所という形で京都の中京区に拠点を構えまして。それまでは普通のレーベル事務所って感じだったんですけど、新しい場所が元々服屋さんだったのもあって、オープンオフィス的に、レーベルでリリースしてるレコードやグッズを売ろう、って感じで事務所の一部スペースを店舗に変えて。カクバリズムやBayon productionなど近しいレーベルの商品や委託でCDやレコードを取り扱うようになったのがきっかけです。

小山内信介さん

森川 僕は小山内くんとかと出会ったJET SET時代の後に大阪に引っ越して、シエスタレコードってレコード屋さんでバイトしていて。インディーの新譜のオーダーをしたり、ネオアコやソフトロック、フリーソウルなどのレコードのコメントを書いていたりしました。でもある時に思い立って、「これから僕は海外に買い付けに行ったりとか、そういう可能性ってありますか?」って店長さんに質問したら、「それは無い」って言われてしまって。僕はレコードを仕入れて売るだけじゃなくて、海外アーティストの作品のライセンスを取って自分でレーベルを持ちたいってことを学生の時から意識していたので、それをきっかけに独立しよう、と。そこから大学時代からずっと買ってた手持ちのレコードを元手に個人のお店を始めて。なんとか生きていける程度に生計を立てられる感じだったんですけど、そこから加古川に引っ越して......。小山内くん、確かHALFBYとHandsomeboy TechniqueがThe Pipettesとかとストックホルムでライブしてた時に会ったの覚えてる?JET SETの小堺くんとかもいたよね。あれ何年でしたっけ?

小山内 あれは2006年かな。

森川 それぐらいの時期にスウェーデンのアーティストとメールのやりとりをしていて、実際にライセンスの話をしようと思って現地に行ったんです。レーベルの第一弾アーティストになるThe Starletsともその時に出会ったんですけど、それでCDをリリースして、レコードを再発するっていう話になって。その代わりに「日本でツアーを絶対に回りたいから、それが条件だ」って言われたので、彼らを日本に呼ぶってぐらいのところからレーベルとしてのカタログが出始めた感じです。

森川直樹さん

──ご自身で実地に赴いてお話をして、契約を実現されたんですね。

森川 そうですね。スコットランドのケバブ屋さんみたいなところで面談して。その来日ツアーをやった時に神戸で丸山さんがサポートしてくれて、打ち上げで飲みに行ったりもしたんですよ。あそこから時間めっちゃ飛んでるんですけど、最近のことみたいですね。

丸山 「終電ギリギリや」ってメンバー全員でダッシュしたのを覚えてる(笑)。

──dessineeさんは神戸にあったお店が母体ということですが、簡単に経歴を伺えますか?

丸山 経歴っていうか、僕はレコードショップでバイトとかしたこともなく、いきなり自分で始めちゃったんですよ。

──そうだったんですね。

丸山 それが多分2002年で、小山内くんがHALFBYとか出し始めた頃にお店を始めたんですけど、あんまりよく覚えていないんですよね(笑)。わりと勢いでやっちゃってるから。

──いきなり「お店/レーベルを始めよう」と思い立ったきっかけはどのようなものだったのでしょうか?

丸山 どこかに勤めるより自分でやった方が向いてるな、と思ったんですよね。僕もレコード屋さん始める前から個人でレコードを売ったりトレードをしていたし、ただ自分が欲しいレコードを見つけるためだけに海外にも年に3、4回行ったりしてたんですよ。で、聞かなくなったレコードを販売している流れで、その時やっていた仕事を辞めて、「他の会社に転職するのもな……」って感じだったんで、自分でお店を始めようと思ったんです。たまたま知り合いのカフェの事務所が空くって話があって、じゃあ借りよう、みたいな感じでポンポン進んだ感じです。
ただ、お店を始めたはいいものの、当時はCDしかリリースされていなくて、レコードになってないタイトルが多かったんですよ。そこでふと「自分で作ればいいやん」って考えたんですよね。たしか最初は卸(流通)をやり始めて、違うレーベルさんに企画を持ち込んで「レコードつくりませんか」って共同で作っていたりしたんですけど、2005年ぐらいにはもう自社で出すようになっていました。だからレーベルを始めたきっかけは、売りたい商品が無かったから、自分で作れば良いじゃない、って感じですね。

丸山雅生さん

──皆様それぞれ現在の場所にお店を構えるまで移転を経験されていますが、今の場所を選ばれた理由や、移転したことで変化した部分を教えて頂けますか?

小山内 今の場所に移転したのが一昨年の12月なんですけど、移転の理由は10年ぐらい居た前のビルの建て壊しの話が出て、テナントが全員出なきゃいけなくなって。強制的に新しいところを探さなきゃいけなくなったんですけど、以前はテナントビルの3Fで、「そこに行くぞ」って感じの目的を持ったコアな人しか来ない場所って感じだったんですよね。当時からもうちょっと開放的な場所がいいなと思い、出来れば路面店でやりたいなという気持ちもあったんですけど、京都の市内は家賃が高くて全然見つからなくて。もう一つ、レーベルがメインなので、店内でインストアイベントをやれるような場所にしたいという理想があったんですよね。今の場所はちょっと市内から外れているんですが、そういうことが出来そうな場所で。

──ベニュー的な役割も果たせるお店にしたかったんですね。

小山内 そうですね。京都の人から考えると「なんでそんなところに作ったんだ」って思われるような、結構辺鄙な場所になるんですけど。商店街の一角から少し奥に入った、車も入れないような細道なんですけど、元々町屋なんで入り口が広い土間になってて、大家さんも音楽に理解があるので、今はちょこちょこインストアライブや隣にあるレンタルスペースを借りてDJパーティーをやったりしています。移転してきて良かったなと思いますね。


Second Royal Shopの店内

──移転の前後でお客様の雰囲気に変化はありますか?

小山内 今は京都の上京区なんですけど、周りが学生街だったりするので、学生の人がフラっと来てくれたり。その辺りに住んでいる人が買いに来てくれたり、一見さんが増えた印象がありますね。前から知ってくれていて、遠くから目指して来てくれる人もいるので、単純に客数が増えた気がします。

──大学も近い場所だと思いますし、中心地から離れているとはいえカルチャー的なところに関心がある人が多い土壌なんでしょうか。

小山内 そうですね。大学生はもちろん、ミュージシャンもたくさん住んでいる地域だと思います。

──fastcutさんはお店が大阪にあった時期もあるんですよね?

森川 はい。レーベルは2007年に始めて、8年ぐらい経って自宅に保管していたレコードが溢れ出すほどの量になったので、そのタイミングで東加古川駅に小さなお店を作ったんです。その後物件を見るのがすごく好きな時期があったんですけど、ちょうど大阪の南堀江のど真ん中に居抜きの良い場所を見つけて、移転しました。普段家族に何か提案しても大体反対されるんですけど、家内を実際現地に連れて行ったら「これだったらいいんじゃない」って感じだったので(笑)。売上はずっとオンライン通販のウェイトが大きかったんですけど、大阪に結構期待するところもあったので、とりあえずやってみよう、と。三年間やってみて、ある程度お客さんは増えたんですけど……。南堀江ってコロナ前は観光客が多くて、海外のお客さんとかも多かったんですけど、夜間人口がすごく少なくて。夕方6時ぐらいになったら意外と人が歩いていないんですよ。

──南堀江はアパレルのお店などが多いお洒落なエリアのようですが、バーやクラブといったお店が多くあるわけでもないんですね。東京だと原宿や表参道も、夜になると人が少なくなりますが。

森川 バーやクラブもあんまり無くて、真っ暗になるんですよね。服を買いに来るような、そういう観光客が多くて。レコード屋さん自体は心斎橋とかは凄く多いんですけど、堀江に関しては夜は真っ暗になってしまって。そのタイミングでコロナが蔓延したのもあって、地元に戻って土地を見つけて、そこに会社の建物を建てた方がいいんじゃないかと。家賃を払い続けるより、掛け捨てじゃなくて将来的に残る形にしようと思って、建ててしまいましたね(笑)。

──加古川に移って、お客様の普段の入りなどに変化はありましたか?

森川 平日とかは凄く静かですよ。ただ、色んなお客さんが来られます。姫路とか、加西や加東市とか、その辺りの方が多いですね。加西にはTobira Recordsさんがありますけど、あの辺りではちょっと個性的な方たちがDJパーティーとかをやってて、そういう方がフラっと現れたりとか。地元のお客さんも若い20代のカップルとかが来てくれたりして、シュッとしたアンビエントとか買って行ったりもします。大阪に比べるとお客さんは減ったんですけど、その分通販のサイトのカスタマイズをして、やることは全然増えている感じですね。

──ありがとうございます。dessineeさんはどのような経緯で神戸から東京に移ってきたんでしょうか?

丸山 神戸も家賃が結構高くて、良い物件が無くて。東京に移る前の神戸の物件は地下で、そこは天高4mぐらいあって凄く広かったんですけど、その時たまたまスタッフが減っていて。「この人数でこの広さいる?」みたいな話になって、ちょっと身軽になったから新しい物件探そうかなと思った時に、「別に神戸にしがみつく必要ってあまり無いな」と思って、色んなところ探したら意外と東京って安い物件あるんやなと思って。出張とかでよく行ってたからちょこちょこ見てて、たまたま渋谷に一戸建ての変な物件を見つけて、面白かったので移った感じです。

──関西を拠点にお店をやっていたのが東京に移ってくるのって、傍目から見ると結構大きな変化に感じるんですが、あまりそこに対して抵抗や気負いは無かったんでしょうか?

丸山 あんまり無いかもしれないですね。「ここじゃないとダメ」みたいな考え方を持つとつまらなくなっちゃうから。「別に海外でもいいしな」ぐらいのノリで考えてましたね。東京に来てみると色々便利だし、今もそんなに困ってないし。神戸が嫌だったってわけでもないんですけど。お店のカラーとしても定番的なものを扱ってるお店でもなかったので、通販の比重の方が大きかったですし。なので、そんなには気にしてなかったですね。

──神戸のお客様と東京のお客様の雰囲気って、結構違うような気がするんですがいかがでしょうか?

丸山 たしかに、神戸の時は栄町っていう雑貨屋さんやお洒落なお店が多いエリアにあったので、その流れで来てくれてた人が多かったです。元々そんなに音楽に興味が無いような人もいらっしゃいましたね。東京に来たら逆に通販でよく買ってくれてたって人が渋谷のお店によく来てくれるようになりました。まあ、いつもそれなりに面白い感じではあります。

──なるほど。その後渋谷のお店から三軒茶屋に移られていますね。

丸山 はい。渋谷の物件はぶっちゃけ家賃それなりに高かったんで。三茶の物件は広さもあるし、駅からも近いし、建物自体はワンフロアにワンテナントしかないから音も気にする必要が無いし。元々三茶に行きたいとかも無かったんですよ。ほとんど来たことも無かったし。たまたまその物件を見つけて、見に行ったら良かったからトントン拍子で決まって移転をしたんですけど、すぐコロナになってあまり営業出来てないって感じです。古くて雨漏りする以外は気に入ってますね(笑)。

森川 神戸は家賃が高いってお話がありましたけど、僕が大阪に出た時に神戸も探してたんですよ。でも安くて良い物件が見つからなくて。だから丸山さんが言っている通り、神戸ってなかなか良い場所が見つからないんですよね。

丸山 中途半端に高いよね(笑)。

森川 なんか高いんですよね、敷金礼金とかも。

──森川さんも物件を見るのが凄くお好きだったんですよね。素人質問なんですが、レコード屋さんの方が物件を探す時に重視するポイントってどんな部分なんでしょうか?

森川 とにかくレコードが置けるスペースじゃないですか?レコードが置けて、壁に飾れるような。僕は縦長なイメージがあるんですよね。縦長にストンと、箱みたいな形のところがあればいいかな、と。


fastcut records店内

──広さと間取りが一番ということなんでしょうか。

森川 別に狭くてもいいんですけど、壁面にたくさんレコードを飾れる高さは欲しいな、とか。

丸山 お店にもよるんですけどね。ニッチなものを売ってるお店が路面にあっても仕方が無いし。ウチは渋谷の時は路面だったんですけど、あまりメリットは無かった気がしますね(笑)。

──なるほど。小山内さんはライブが出来るようなスペースにしたいってことで今の場所を選んだんですよね。

小山内 そうですね。それを全部出来る場所にしたいっていう、ちょっと欲張りな。プラスでコーヒーを飲めたりお酒を飲めたり、レコード目当てで来る人もいれば場所目当てで来る人もいるような場所が作れたら理想だなと思って。それを全部満たせる場所が今のところって感じです。

レーベルのカラーとお店のテイストは、どのように接続されている?兼業ならではの苦労と面白さ

──皆様がレコード屋さんをご自身で始める時に、「こういうお店にしたい」というビジョンをある程度思い描いて始めると思うんですけど、皆様がそういったお店の在り方をイメージした時に参考にしたり意識したお店というか、思い出に残っているお店はありますか?

森川 大学生時代とかだと、大阪のレコード屋さんに結構行っていて。JELLYBEANっていうレコード屋さんには現EM Recordsの江村さんと現Newtone Records店長の齊藤さんがいて、大月さんって方が店長だったんですけど、そこは当時から僕が好きなインディーとか、Salsoulのディスコみたいな黒いものも置いていたり、フリーソウルに繋がるようなリイシューとかも置いていて、行ってて凄く楽しくて。江村さんがいた頃は確か心斎橋PARCOの上、クアトロの一つ下ぐらいにあったんですよ。ライブをクアトロに観に行ってた大学生の時に、ついでにJELLYBEANに行って7インチとかを買ってたんですけど、齊藤さんが革ジャン着たお客の男の人に首を掴まれて揉めていたり(笑)。その頃は江村さんがセレクトしたソフトロックのコンピとかも飾っていたりして、凄く楽しかったんですよね。大学生の時は大阪でそういうところを回っていました。なので今も大阪に行ったらNewtoneに行ったりとかもします。参考にしたお店というよりは、色んな時代の音楽が聴けて楽しかったなってことで記憶に残っていますね。

──小山内さんはART ROCK No.1さんやZESTで働かれていた経験をお持ちですが、特に印象に残っているお店や意識したお店は何でしょうか?

小山内 今はもう無いお店ですけど、名古屋のArch Recordと渋谷のMaximum Joyは印象に残っています。どちらの店舗も凄くインディーの音楽に愛情がある店主さんの人柄がそのままお店に出ているような印象があって。自社の商品を置いてもらうために色々なレコード屋さんに足を運んでいる中で、行ったらいつも話を聞いてくれたり、おすすめのレコードを教えてくれたりととてもお世話になりました。あとEscalator Records時代からの大先輩である仲真史さんが運営されてる原宿のBIG LOVEの展開はいつも刺激になっています。

海外で言うと、イギリスのRough Tradeに行ったのも印象に残っています。ライブスペースがドーンとあって、グッズが沢山展開している中に今推しているレコードが置いてあって。特に知らないアーティストでも、Rough Tradeがレコメンドしているってだけで買っちゃう、みたいな。あれはやっぱり憧れますね。

──アパレルも置いて、ライブも出来て、みたいなスタイルは結構意識したところもありますか?

小山内 そうですね。レコードに興味無い人でも、トートバックとかTシャツをお土産に買って行けたりしますし。店頭でたくさんグッズを展開しているのも、その辺からの影響があるのかなと思います。

──丸山さんはいかがでしょうか?

丸山 うーん、学生の時は神戸のハックルベリーによく行ってましたね。あと元町の高架下の、ほぼレコード屋じゃないような、古道具とレコードが混じったようなところとか。そういうところの方が個人的には好きでしたね。神戸は当時あんまり新譜とかやってるようなお店が無かったから、敷居も高かったし。それ以降は僕も大阪とか京都に行ってました。あとは海外に結構行ってたんですけど、海外のレコード屋さんはかなり面白いところがいっぱいありましたね。だから結構色々なものの影響を受けてると思います。

──海外で特に印象に残っているお店は、例えばどんなところですか?

丸山 印象に残っているのは、「お店なのか家なのか、どっちなん?」みたいなお店ですね。猫がいたり子供が遊んでたり、そういうのは印象に残っています。

──個人のディーラーがやっているような?

丸山 そうなんですけど、ショーウィンドウがあって一応外観はちゃんとしたお店なんですよ。多分居抜きで物件借りてるから、使い回ししやすいんですよね。フランスとかはそういう物件がよくあるんですけど、そこを借りると自動で綺麗なショーウィンドウがついてくる。外から見るとお店でも、入ると「これ、店......なの?」みたいな感じの場所も多いですね。中でタバコ吸って、お酒飲みながらみんなで喋ってたりとか。いきなり飛び込んでいくとちょっとギョッとするけど、仲良くなると居心地良くなるようなお店が結構ありましたね。ヨーロッパのどこに行ってもありました。

──なるほど。そうした中で、丸山さんご自身がお店を開く時に「こういう空間にしたい」とイメージしたのはどういうお店だったんでしょうか?

丸山 実際自分にとってストライクなところがあったかって言うと無かったから、逆の発想で自分が作りたいお店を作った感じですね。内装も自分で作ってたから、ある程度やりたいように出来るし、気になったところはすぐに直せるし。今も飲食店の営業許可を取ったりしてるし、そのためにキッチンにシンクをつけたり色々やったりしました。参考にしているものは沢山あるけど、結局どちらかと言えば逆転の発想で、「無いものを作ろうかな」って感じですね。

dessinee shop店内

──ありがとうございます。皆様のお店にはフラッとお越しになるお客様とレーベルの作品やアーティストのファンのお客様がいらっしゃると思うんですが、その割合はどのようなものなのでしょうか?

森川 フラッと来る方の方が多いですね。大体レコード好きな人ってそこまでうちのレーベルのこと知らないので(笑)。一般的なお客さんが多いです。レーベルの作品も買ってくれる人はいるんですけど、それはネットで知る人が多いみたいですね。

小山内 ウチも今はそうですね。移転する前は逆に、レーベルだったりアーティストだったりを知っていて来てくれる人が多かったんですけど。今は知らなくて、普通に「レコード屋さんだ」って思って入ってきてくれる人の方が多いです。ただ、この間2月にHomecomingsのライブが京都であって、結構大きなホールでのライブとオールナイト公演の2 DAYSだったんですけど、その二日間の売り上げが凄かったです(笑)。知ってくれてて、行きたいと思ってくれていた人が県外からお店に来てくれたみたいで。イベントと連携しているところもあるのかなと思います。

丸山 僕は長いこと自分でお店に立って接客をしてなかったから直接触れる機会はあまり無かったんですけど、レーベルの方がどっちかと言えば日本全国で流通してた分名前が出ているっぽいんですよね。自社の海外アーティストのツアーもよくやっていたしタイトル数も結構あるから、目指して来る人は結構多かったっぽいです。フラッと飛び込みで来る人はあんまりいなかったんじゃないかな(笑)。神戸の時はそうでもなくて、「ここは雑貨屋さんですか?」って入ってくる人が多かったっぽいんですけど。

──そうした形でお店に入って、あまりレコードを買ったことが無いような人が商品を買っていってくれることも結構ありましたか?

丸山 そうですね。それでCDを買い始めたり、「レコードプレーヤーを買いたいんです」って言うから紹介したり販売したりして、未だにウチでレコードを買ってくれる人も結構いるので。そういうのは凄くありがたいですね。

──そうしたきっかけになるのは凄く良いですよね。皆様のレーベルにはそれぞれカラーがハッキリとあって、一方でお店ではそれぞれ幅広いジャンルのタイトルを取り扱われていますよね。お店の商品を選ばれる中で、どのようなエッセンスを持つ商品を選ぶことを意識していますか?

小山内 元々始めたのはレーベルのアーティストの商品を店頭で買えるようにするためだったので、そのアーティストと繋がりがあるアーティストの商品だったり、レーベルでリリースしているタイトルと何らかの接点があるものを取扱し始めて、その流れで今の展開になっています。基本的には、例えば「HALFBYを聴いてくれてる人はこのアーティストも好きだろう」とか、「Homecomingsを聴いている人はこういうアーティストがも好きだろう」みたいな感じで、聴いてくれる人をうっすらと想像しながらセレクトしていますね。別のアーティストの作品目当てで来てくれたけど、「これもあるんだ」とか、「試聴してみたらこれも好きだな」みたいな出会いがあれば良いなと思いながらセレクトしています。

──例えばインディー系のバンドを中心に聴いていた人が、同じお店に置いてあることでエレクトロニック系のクラブミュージックを手に取って、そういった音楽を好きになることも結構ありそうですね。

小山内 そうですね。そういった感じで好きなものが広がったらいいな、と思ってます。

森川 ウチは、レーベルの方は基本的に僕のマイブームでリリースが決まっています。最初の頃は北欧のインディーポップとかが好きで、スウェーデンとかイギリスのインディーロックとかを中心に出していたんですけど、途中からもう少し違う感じのアーティストをリリースするようになって。台湾のFour Pens(四枝筆)とか、最近だと韓国のHeo Hoy Kyungとか、Kimpommeとか。配信とかで知って、直接コンタクトを取ってリリースしていくんですけど、韓国の音楽とかでも結構USのインディーとかに通じるようなフォーキーなところとか、僕が昔好きだったMazzy Starみたいなドリームポップの雰囲気も感じられたりして。それでどんどんレーベルのテイストが変わって行ってるのはあるんですよね。それと同じで、レーベルの作品だけ壁に並べてても自分のエゴまみれな感じになってしまうので、ちゃんと海外のリストを見て、元々フリーソウルとかが好きだったので、メロディー的にグッと来るようなものならジャンル関係無く、ディープハウスからUK、USのインディーとか、エレクトロニカやアンビエントまで色んなものをチェックしてセレクトするようにはしていますね。ウチはもうバイヤーのスタッフもいるので、日本のリイシューとかそういうものに関してはMiles Apart RecordsとSailyardをやっている村上くんがやってくれています。

丸山 ウチはお二方よりはるかにジャンルとかがバラバラで(笑)、基本的にはメロディとか、自分が感動したものだけを扱いたいってスタンスで20年ぐらいやってます。だからそういうジャンルとかの共通点みたいなものがあまり無いっていうか、言葉にしにくいんですよね。

──個人的な感覚でしかない、というか。

丸山 そうですね。僕はぶっちゃけ自分が良いと思っていないものを人に勧められないので、ほぼそれだけです。スタッフとかにも同じことを言うと大体みんな困るっぽいんですけど。だからストーリーとかキーワードとかが案外無くて、説明しにくいんですよね。

──例えばラウンジっぽいものやモンドっぽい音楽のイメージは漠然とあると思うんですが、それも意識されているわけではないんですね。

丸山 おそらく見る人の視点で変わると思うんですよね。例えばジャズが好きな人が見たらジャズで結構突っ込んだものがあるし、ソウルとかも色々あって、分かりにくいんじゃないかなと。でも基本はメロディがいいものとか、そういう選び方しかしていなくて。自分が聴きもしないものを人に勧めにくいな、ってスタンスです。聴いてもらった方が早いですね。

──実際にサイトで全て試聴出来るようにされていますもんね。

丸山 そうです。それが前提で、店舗でも「聴いてください、聴いてください」って感じです。前はそれなりに頑張って接客していた時もあったんですけど、結局「どうぞ聴いてください」が一番ですね。必要ならもちろん手助けするし、質問されたら答えるって程度でいいかなと。レーベルもお店も全く同じスタンスなので、見る人が見れば凄くバラバラで適当にしか見えないんじゃないかなと思います。

──皆様それぞれお付き合いも長いと思いますが、お互いのレーベルからリリースされているタイトルもチェックされたり仕入れられたりされると思うんですけど、お互いのレーベルから出ているタイトルで好きなものはありますか?

森川 僕は小山内くんのSecond Royalで言うとHALFBYとか、Handsomeboy Techniqueが昔から凄く好きですね。dessineeだと昔から丸山さんがプッシュしてる流線形とかは今も人気でずっと売れてるし、あとMari Persenとか。僕は始めた頃にdessineeから結構仕入れていましたね。多分丸山さんもリリースしすぎてて、僕もリリースし過ぎているので、お互いに「これ出しましたよ」っていうのは無いんですけど、情報はずっと流れて来ますね。

丸山 小山内くんのとこやとHandsomeとHALFBY好きかな。

小山内 嬉しい(笑)。

丸山 森川くんのところは今でも自分でちょこちょこ買ってるよ。いつもチェックしてる。

森川 本当ですか。

丸山 元々3人とも出発点がインディーロックで、テイストがそれなりに近いところがあるから。

小山内 印象として森川くんのfastcutはシューゲイズとかネオアコとかを出発点としている感じがあって、そういうのが好きだったら絶対大丈夫って感じがありますよね。丸山くんのところは、全く知らないけどめちゃくちゃいいレコードだったり、ちょっと王道からずれてるけど、「こんなんあったんや」みたいなタイトルを発掘してくる信頼感があるし。それぞれの得意分野の中でリリースしてくるものを、安心と信頼のブランドとして見ています。

──それぞれ個性がありつつ、共通点もあるからこそ伺えるお話ですね。例えば、皆様のようにレーベルとレコード店を兼ねているからこその大変な部分や、反対にその形態だからこそ実感出来る面白さなどはありますか?

小山内 難しい部分は、僕はどっちもほぼ一人でやっているので、レーベルが忙しくなると店頭の仕入れにあまり手が回らないっていう。

丸山 ウチも全く一緒(笑)。

森川 一緒ですね。2ヶ月に一回ぐらいリリースの準備をしていたら、入稿してリリースするまでずっとそのアーティストの作品をひたすら聴くことになるんですね。だから他の新譜のチェックとかが後ろに回ってしまって。年間を見てもレーベルのアーティストの作品をいつでも聴いている感じになって、一直線になってしまって、そういう時に「Snail Mail聴きたいな」みたいな感じにならないんですよね。

小山内 それはありますよね。プラスの部分は、レーベルのアーティストを好きな人が実店舗に来てくれて、そこで交流したりするのが楽しいですね。ライブの物販とかでもたまにありますけど、それとはまたちょっと違うファンの方と話したりとか。そこで話を聞くこととかって、実店舗が無いと出来ない体験だと思うので、そこは楽しかったり嬉しかったりするところですね。

丸山 僕は好きなことしかやってないから、続けられていたら全部楽しいってスタンスですね。その逆は、自分でやるしかないのでお金のことも全部考えないといけないから、いつもその心配をしていないといけないってところです。当たり前のことなんでしょうけどね。レーベルもやって、となると、やっぱり時間が足りないです。何時間仕事をしても足りないから。お店に立ってると、さっきの小山内くんの話じゃないけど、レーベルのことを知ってる人とか、お店のことを昔から知ってくれてる人が「やっと来れました!」って言って来てくれるのは凄く嬉しいです。海外の人も、東京だと頻繁に来てくれるし。今もあまりお店開けてなくても「開けてないのか」って問い合わせは凄く来るので。そういうところは嬉しいかなと思いますね。

──森川さんも、レーベルのことを知っている方が始めて来てくれるのはやり甲斐に感じますか?

森川 そうですね。最近アジア圏のアーティストのツアーを企画することがあって、ウチのレーベルじゃないけど、最近シンガポールのSobsっていうバンドのツアーをやって。ギターのラファエルが凄い渋谷系オタクで、全国のレコード屋さんとかブックオフとかを掘ってるんですけど、ツアー終わってから突然フラッと加古川に遊びに来てくれましたね。最近だとfastcutの村上くんがリリースしたthe nevermindsというカナダのバンドのギタリストが旅行で来てくれたり。突然現れる方が多いですね。あとインドネシアでfastcutのこと知ってる方が買い物に来てくれたりとか。アジア圏の繋がりが結構増えてきてるかな、という感じですね。

──Second Royalさんとdessineeさんも海外のファンの方は多くいらっしゃいますか?

丸山 多いですね。海外レーベルの商品でウチが作っているものも多くて、クレジットされているから結構問い合わせが来ます。「マスタリング誰がやってるの?」とか。あと、お客さんからのフィードバックも海外の人の方が直接的に嬉しいメッセージをくれたりします。

小山内 ウチはそんなに「誰かが好きで」っていうのを言ってくれるのはそんなに無いですけど、海外からのお客さんも結構多くて。日本のインディーものをいっぱい買ってくれるツーリストの人もいて、「このマイナーなアーティストを一体どこで知ってるんだ」って感じの人もいますし(笑)。あとは、ウチでDSPSって台湾のバンドの7インチを出させてもらって、Homecomingsと一緒に台湾ツアーと日本ツアー回ったり、ウチの周年のイベントに出てもらったりとかして交流が生まれてるんですけど、お店にも何回も来てくれてて。その友達も日本旅行に来てくれた時にお店に来てくれたりもしてるんで、交流は増えてきましたね。

──京都だと観光の流れでいらっしゃる海外の方も多そうですよね。

小山内 そうですね。京都観光に来て、そのままフラッと寄ってくれるような方も多いです。ただ、もうちょっと市内の方がそういう恩恵には預かっていると思いますね。ここまで来るのはなかなかハードル高いので(笑)。

──それでも市内からわざわざ足を伸ばしてくれるようなファンの方も結構いらっしゃるんですね。

小山内 そうなんですよね、「なんで来てくれたんだろう」ってびっくりするほど(笑)。ありがたいなと思うんですけど。

──お店の雰囲気とか、リリースされているアーティストの雰囲気のような要素も含めて、わざわざ足を運びたくなるようなお店になっているんでしょうね。それもまたレーベルと実店舗を兼ねているからこそ、というか。

小山内 そうだったらありがたいですね。

「レコードは記憶を辿るのが面白い」

──仮にこれからレコード店を始めたいと考えている人や、新たにレコードレーベルを始めたいと考えている人がいたとして、皆様からその人たちに何かアドバイス出来ることはありますか?

森川 僕の考え方から言うと、結構タフな精神力が必要とされますね。まずインターネットの通販から軌道に乗せたり、なんとか小さなレコード屋さんをオープンするところまで辿り着かないといけないので。でも、ずっと音楽とかレコードが好きだったら続けていけるのかなって気がするので、「レコード屋やレーベルをやりたいんです」って言う人がいるのであれば、喜んで、頑張って欲しいと思いますね(笑)。「時間はかかるから」とは言いますけど。

小山内 レコード屋さんやレコードを実際にリリースするレーベルは、単純にフィジカル面の大変さがありますね。レコード500枚作ったとして、それを置いておく場所がまず必要なんですよ(笑)。事務所が構えられない時代は自宅が段ボールだらけで、段ボールの間で寝るような感じだったので。自分でリリースするレコードも、販売するレコードも単純に物量が凄いので、そこは普通に大変そうだなと思いますね(笑)。

森川 引っ越しも大変ですよね(笑)。

小山内 大変。やりたくないなって毎回思う(笑)。

──丸山さんは未経験からいきなりスタートした形とのことですが、例えば若い人で特に経験も無いまま「始めたい」と言っている人を見たら何と言ってあげたいですか?

丸山 全力で止めるんじゃないですか?(笑)。今の二人の話を聞いていて、ぼんやり昔のことを思い出して来たけど、あんなこと人に勧められるわけがないから(笑)。よっぽど好きじゃなければ多分やめておいた方がいいけど、好きだったら続けられるかもしれないから、「やってみたら?」って言うかもしれないですね。他人事みたいで申し訳ないです(笑)。

──続けてきた皆様だからこその言葉の重みがありますね(笑)。ちなみに皆様は例年Record Store Dayにエントリー頂いていますが、その中で年々変化を感じる部分や、ご意見などはありますか?

森川 大きい変化ではないんですけど、これまでは80年代のシティポップとかのリバイバルが中心だったのが、今年のリストとかを見ていると90年代っていうか、僕らが高校生ぐらいの時の作品のリイシューとか、そういうのが増えて来ていたりとか、海外のリストを見てびっくりしたんですけど、Factoryから出たNorthsideの『Chicken Ryhthms』ってアルバムが、30年記念でRSDに合わせてリイシューされていて。イギリスのレコード屋さんでは普通に安く売ってるんですけどね。海外も日本も90年代のリバイバルが来て、これからまた00年代とかのリイシューが活発化してくるのかな、と思いました。ちょっとずつ、10年ずつずれて来ているのかなと。

小山内 Record Store Dayは、その時に合わせてリリースされる面白いタイトルが沢山あるんで、単純に毎年楽しみにしていますね。買う側としても楽しみだし、それを取り扱える嬉しさもあります。変化っていうところで考えると、ちょっと定着してきたのかなって気はします。最初はざわざわと、「こういうお祭りがあるよ」って感じで少しずつ周知されていったと思うんですけど、それが一旦、Record Store Dayや「レコードの日」っていうものがあることがレコードを買ってる人たちの間では定着して来たのかなと。その日にいっぱいでるんで買う側も大変ですけど、お店側はいっぱい並べられるタイトルがあるので、それは嬉しいですね。

丸山 僕は正直言うと、タイトルが多すぎて全く付いていけないです。お客さんもそう思ってる人が多いんじゃないかなって気がしますね。年々タイトルが増えて、ニッチすぎるようなタイトルもぶっちゃけ増えてきてるから(笑)。「誰が買うんやろな」っていうのも、逆に面白いなとは思っています。とはいえ実際にお店として何を仕入れるかっていうと、追いつかないですね。そんな印象です。

小山内 「ウチはこれしか入荷しません」って言ってるのが、逆にその店の売りになる感じもあるかもしれないですね。

丸山 ウチも毎年「ほとんど入荷しません」って謝ってる感じですね(笑)。

──「もうちょっとこうなって欲しい」みたいな部分はいかがでしょう?

丸山 今のまんまでいいんじゃないですか?「身近なもの」にするってスタンスが一番大きいんだろうし、どんどんメディアにも拡散して協賛をとってきて、って感じでいいんじゃないかなと思いますけど。ただ、球が少なくなってきてクオリティが下がりだすと、おそらく離れていくきっかけもになるので、その辺の舵取りを運営の方がしっかりやるしかないのかな?と思いますね。

小山内 レコード自体が広まっていくことに関しては歓迎でしかないので、レコード好きが何かしら気にする日があるっていうのは良いんじゃないかなと思いますね。賛否もあるとは思いますけど、それを毎回気にするレコード好きがいて、そこで間口が広がって入ってくる人がいれば何よりなんじゃないかなと思います。

森川 Record Store Dayのセレクトって、10代から5、60代まで楽しめるようなリストになっているので、入り口になりやすいかなとは思っていて。anoちゃんのレコードとかも出ますし、僕の中学生の娘もポスター見て興味津々になっていたので、中学生とかでもレコードに興味を持つきっかけにはなるんじゃないかと。ウチの店には高校生のお客さんも来たりするんですけど、そういう若いお客さんとかも結構レコードに興味を持ってくれてるので、年代問わず色んな作品がその日に展開されるのは楽しいですよね。

──ありがとうございます。最後に、長年レコードを取り扱ってきた皆様にとっての、レコードの一番の魅力を教えて頂けますか?

森川 自分はレコード屋さんなので、レコードは取り敢えず買ってしまうんですよね。あまり聴く時間も無いし、家に飾るわけでもないんですけど、ジャケットの紙の匂いとか、開けた時の盤の感じとか、パッケージとして凄く好きなので、死ぬまで買い続けるのかなと思います。

──モノだからこその質感に惹かれるんですね。

森川 取り憑かれてる感じはありますね(笑)。

小山内 その一枚を見た時に、どこでどんな時に買ったかをなぜか大体思い出せるんですよね。「これはいくらで買ったな」とか、「誰のところで買ったな」みたいなことが蘇ってくる、そんな不思議な媒体な気がします。

──記憶と凄く結びつきますよね。

丸山 レコードって結構ジレンマですよね。今時はみんな配信とかデジタルで聴くから、「レコードに針を落として聴く人ってどれぐらいいるのかな?」って思っちゃうんですよ。でも、ついつい買っちゃうっていうのは森川くんと一緒。音楽の良さそのものが一番重要だと思う一方で、それに上乗せされる「思い入れ」みたいなものってモノにしか無いと思うんですよね。今まで何万枚とレコードを買い付けてるんですけど、どれも「こういうところで買ったな」とか結構覚えてるんですよ。そういう部分が良いなと思うから買い続けるのかなと思うし、買い続けている限りはお店とかレーベルを続けられるのかなと思います。

小山内 買ってる時は「思い入れ」とか考えないんですけどね。後から思い返してみたら、そう思うんですよね。

丸山 そもそも買った記憶無いやつもあるからな。「こんなんいつ買ったっけ?」とか、「なんでこれ二枚もあるんやろ」とかも結構あるから(笑)。記憶を辿るのが面白いなと思います。

小山内 自分が好きな音楽がレコードで手に入る嬉しさって、僕の中ではめちゃくちゃ大きいものなんですよ。

丸山 安心感あるよね。

小山内 そうだね。「これ再発された、嬉しい!」とか。「これ再発された、悔しい!」もありますけど(笑)。

──レーベルをやられている方ならではの感情ですね(笑)。

小山内 そういう喜びの振れ幅が大きい媒体な気がしますね。それはレーベルをやっている上でもそうで、「これをレコードで出せた」って嬉しさはひと塩だと思います。

【SECOND ROYAL SHOP】
■住所 〒602-8341 京都市上京区三軒町48-11
■営業時間  平日:15:00 – 19:30 土日・祝:13:00 – 19:30
店休日:火曜日
■店舗紹介  京都を拠点に活動するインディーズレーベルSECOND ROYAL RECORDSが運営するレコードショップ。国内・海外の新譜・中古レコード / カセット / CD / アーティストグッズなど様々なアイテムを取り扱っています。

【fastcut records】
■住所 〒675-0037 兵庫県加古川市加古川町本町364-1 2F
■営業時間  火〜土 12:00〜18:00 店休日: 日月祝
■店舗紹介  2006年にオンラインストア”fastcut records”としてスタート、2007年には同名で音楽レーベルをスタート。 2022年2月4日(金)に兵庫県加古川市に新店舗を開店。

【dessinee shop (デシネ・ショップ)】
■住所 〒154-0024 東京都世田谷区三軒茶屋1-33-21 森本ビル3F
■営業時間  不定期のため当店の営業カレンダーにてご案内しております
■店舗紹介  『Good Music』、『Fantastic Something』を求めてバイヤーが海外の色々な国へと買付へ出向き、毎日のようにリリースされる新しい作品、知られざるアーティストを発掘&ご紹介したり、自社レーベル『プロダクション・デシネ』でも作品をリリースしています。当店で取り扱っている作品はどれも、当店バイヤーが実際に試して気に入ったものばかりですので、有名無名、洋楽邦楽などの国籍や音楽のジャンル、年代など問わず、上質のメロディに彩られた感動を与えてくれる作品、自然と体が動き出すようなグルーヴィーな作品などを吟味し取り揃えています。いずれも、ぜひ一度お試しいただきたい作品ばかりです。

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